*日本玩具博物館・夏の特別展*


旅客機
ペルー/土製/1990年代
クラシックカー
チェコ/ブリキ製/1980年代
世界乗りもの玩具博覧会U
〜陸と空の乗りもの〜


●会期  2010年7月3日(土) →10月12日(火)
●会場  日本玩具博物館6号館


         

鶏小屋を積んだ馬車
ドイツ・ベルヒテスガーデン/木製/1980年代
 日本玩具博物館が玩具収集を始めて35年以上が経過しますが、乗りものの玩具に関しては、どこの子どもたちにも人気があることに驚かされます。製品化された玩具を待つまでもなく、紙風船や笹舟を作って、それらが空や川を駆け抜けるさまを見守った思い出は、誰の心にも息づいているでしょう。世界の乗りもの玩具の豊富さは、子どもたちがいかに動く玩具を愛し、遠くへ夢をつなげる乗りものに興味をもってきたかを知らせてくれます。

 ひと口に乗りものといっても、馬車や牛車から汽車、自動車、船、飛行機…と様々。それぞれには、人間の知恵が詰め込まれています。中国の古典は、「風に転がる蓬(よもぎ)の葉を見て、人類は車を作ることを思いついた」と記しています。“車の回転を利用して物を移動させる”という発想に、人力、畜力、蒸気やエンジンなどの駆動力をプラスして、人間は乗りもの文化を発展させてきたのでしょう。より速く、より安全に、より快適に…。
 玩具の世界は、新しい乗りものの発明に敏感です。蒸気機関車がレールを走れば、翌年には汽車の玩具が人気を博し、新幹線のデビューに先立って、“夢の超特急”の玩具が登場します。そして、いったん、玩具の世界に取り込まれると、そのほとんどが淘汰されることなく、生命を持ち続けるから不思議です。
 メソポタミアやエジプトの古代文明時代に生み出された場所や牛車が、時を越えて生き続けているように。古いものと新しいものと―――玩具の世界には、歴代の乗りもの文化が詰め込まれているのかもしれません。

 本展では、世界約50ヶ国から陸と空の代表的な乗りもの玩具が一堂に集まり、展示室いっぱい大行進します。乗りものの発達にも目を向けながら、人力車、馬車や牛車、汽車、自動車、ヘリコプター、飛行機などのグループごとに展示し、また消防自動車やダンプカー、ショベルカーなど、働く車も、世界各地から集合します。
 1号館で展示している世界の船の玩具と合わせて、陸海空の乗りもの玩具博覧会をお楽しみ下さい。

■展示総数  約800点
■展示概要
1. 乗りものの始まりと玩具……馬車や牛車など畜力によるもの、駕籠や人力車、自転車などの人力によるもの、熱気球や帆船など、自然の力を利用したものなど、産業技術革命以前の乗りものの形を玩具の中に探します。 
 日本をはじめ、タイやバングラディシュ、ネパールの人力車、世界各地に残る馬車や牛車のユニークな玩具を集めて展示します。
●馬車と牛車……馬車は、馬やロバなどの後ろに車をつけて人や物を運搬するもので、牛車も同様、運搬のための交通手段です。畜力を利用した車がいつ発明されたかは明らかではありませんが、メソポタミアをはじめ、古代文明の遺跡からは、馬車の存在を知らせる遺物が発見されています。ここでは、主に、バギーやカブリオレなど、素朴な馬車を中心に紹介します。

 
     展示風景                                   馬車
                                                ポーランド・ワルシャワ/木製/1980年代

●人力車と自転車……17世紀から18世紀にかけてのフランスでは、大型荷物の運搬用手押し車・ビネグレットが使われていましたが、現在、世界で使用されている人力車の起源は、明治初期の日本に求められます。その後、人力車は、19世紀末にはリクシャー(Rickshaw)の名前で、アジアへと普及し、各地で自転車タクシーへと発展をとげました。

       
自転車のり                               三輪タクシー(輪タク)シクロ
マダガスカル/針金・木・布製/2000年代                 ベトナム/ブリキ製/2000年代    

◇ 乗りもの玩具のいろいろ………産業革命後、様々な動力の発明によって、乗りものは急速に発展します。そのすべてを取り込んで、玩具の世界にも豊かな乗りもの文化が花開きました。木や土、紙や木の実を使った民芸的な玩具もあれば、教育や治療の観点から製作された玩具、また、廃物利用のブリキ製玩具や工場で生産されるプラスチック製玩具があり、乗りもの玩具は色々な分類が可能ですが、今回は、「レールを走る車」「空を進む翼」「道路を走る車」「働く車のいろいろ」のグループによって、世界各地の乗りもの玩具を展観します。
2.レールを走る車……子どもたちの興味関心を表して、新しい乗りものの発明に玩具の世界は敏感に対応します。蒸気機関車がレールを走れば、翌年には汽車の玩具が人気を博し、新幹線のデビューに先立って、“夢の超特急”の玩具が登場します。そして、いったん玩具の世界に取り込まれる、そのほとんどが淘汰されることなく。生命を持ち続けるから不思議です。―――玩具の世界には、歴代の乗りもの文化が詰め込まれているかもしれません。
●機関車……機関車は、車両の中に動力装置をもつ駆動車。他の駆動しない車両を引っ張ったり、押したりしてレール上を運転する車両です。動力源によって、蒸気機関車、ディーゼル機関車、電気機関車などがあります。初めて蒸気機関車が走ったのは、1804年のイギリス。日本においては、明治政府が発足して間もない1872年のことでした。各地の機関車の玩具のデザインを比較してご覧下さい。
       

  
展示風景                                                             列車3両
                                                                            エストニア ecrue ecru社製/木/2000年代
 


●列車……列車は、レールの上を走る連結された車両のこと。人を運ぶ旅客列車と物を運ぶ貨物列車があります。ここでは、蒸気機関車やディーゼル機関車、電気機関車にひかれて走る世界各地の列車の玩具を地域ごとに紹介します。子どもたちの列車好きに応えるように、車両連結部に工夫をこらしたもの、旅客の姿や貨物の種類が楽しい作品も目立ちます。

 
展示風景

3.空を進む翼……空を鳥のように飛ぶことへの憧れは、気球や人力による飛行機を生み出し、やがて1903年、アメリカのライト兄弟が世界初の動力飛行に成功します。
 子どもの空への関心を反映して、世界各地で飛行機の玩具が作られています。本物に忠実な玩具に、形をデフォルメしたデザイン玩具を合わせて展示します。
●ヘリコプター……ヘリコプター創造への模索は、紀元前の中国に始まったともいわれています。
 レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた15世紀のスケッチがヘリコプターの誕生を予感させましたが、実際にパイロットをのせたヘリコプターが初めて飛んだのは、1907年のフランスの空でした。ここでは、ヘリコプターの玩具の単純化された造形の面白さをお楽しみ下さい。
●飛行機……1903年、アメリカのライト兄弟による有人動力飛行に始まった飛行機は、二つの世界大戦の中で技術的な発達をみせました。飛行機には、旅客機、軍用機、実験機などの種類があり、様々な形がありますが、ここでは、旅客機100年の歴史を体現する愛らしい玩具の色々を世界各地からご紹介します。

    
四発機/日本・ブリキ製/1960〜70年代                   展示風景                                        
                                                                              
                                           
                                 

4.道路を走る車……発動機を装備し、その動力によって車輪を回転させる車を自動車と呼ぶと、世界には様々な自動車が道を走っています。玩具の世界には、今世紀初頭のクラシックカーや懐かしいボンネットバスも生き続けています。世界の子どもが喜ぶ自動車玩具をグループに分けて展示します。

 

●クラシックカー……自動車がフランスで発明された頃、動力は蒸気機関。蒸気自動車は、19世紀のイギリスで普及をみていました。1870年、オーストリアのマルクスがガソリン自動車を発明し、ドイツやフランスを中心に、快適な乗用車の開発が進められました。ここでは、20世紀初頭の自動車を模して作られた玩具のクラシックカーを集めてご紹介します。

 
展示風景

●スポーツカー・レーシングカー……スポーツカーは、運転を楽しむことを主な目的とし、操作性を含めた運動性能に重点を置いて造られた自動車、レーシングカーは、自動車競技で使用されることを目的に造られた自動車です。男の子の「カッコイイくるま」へ憧れをのせて、レースカーの玩具は世界の国で作られています。
●バス……バスの起源は、フランスのB・パスカルが考案した乗り合い馬車だとされています。バスの語源は、ラテン語の「オムニバス」(すべての人々のために)にあるそうです。日常の交通手段として、街中を走り回り、たくさんの人たちと一緒に利用するバスは、子ども達にとって、親しみのある乗りもののひとつでしょう。小さな人形を乗り降りさせながら、走らせて遊ぶ玩具が、世界各国で作られています。

  
展示風景

 

●オートバイ……オートバイの原型とされるものがフランスのエンジニア、ルイ・ギョーム・ペローによって発明されたのは、19世紀の終わりのこと。動力は、四輪自動車と同じく蒸気機関でした。やがて、内燃エンジンによるオートバイが誕生すると、1910年頃には、日本の道路にも、輸入車が走り始めました。オートバイのスタイルや高速性に男の子たちの感心は高く、オートバイの玩具は、人気の高い乗りもの玩具のひとつです。
●ジープ……ジープ(Jeep)は、本来、クライスラー社が製造する四輪駆動車のブランド名なのですが、悪路や急勾配においても走行性に優れ、高い耐久性をもつ四輪駆動車が、広く、ジープの名で呼ばれています。昭和20年代、焼け野原になった戦後の日本を走り回っていたのは、進駐軍のジープ。日本における戦後の乗りもの玩具の歴史は、ジープを模して空き缶で作られた、一台のブリキのジープから始まります。


展示風景

●乗ものと人……ここには、乗りものを運転したり、乗り込んだりしている人の姿を表した玩具を集めました。人の姿を抽象化した木製人形を、自動車に乗せたり降ろしたりした遊ぶ玩具、運転手の姿が大きくデフォルメされ、車を転がしたり引いたりして遊ぶ玩具などです。自動車の運転をしてみたい・・・という子ども達の憧れを反映して、世界の各地で乗りものと人の玩具が作られています。

 
ピエロの自動車/アメリカ合衆国/プラスチック・木製/フィッシャープライス社製/1960年代            展示風景                                              
                         

●乗もののある町……これらは、小さな家や森、公園やベンチ、そして自動車やトラックや汽車などを配置して、想像の町や村の風景をつくっていく遊びです。子ども達は、小さな玩具の世界に分け入り、想像の翼を広げると、ときを忘れて夢中で遊びます。移動することが前提となる乗りもの玩具は、小さな町の世界を他の世界と結び合わせ、遊びをより豊かにしてくれます。


展示風景/イタリア※セヴィ社製

●ミニカー……本物の自動車の姿形を縮小して作られる手のひらサイズの小さな自動車は、ミニカーと呼ばれ、世界中で作られています。日本でも何度か、ミニカーのコレクションブームがあり、夢中になって集めた思い出をもつ方々も少なくないでしょう。ここでは、スウェーデンやイギリス、インドのミニカーを少々ですがご紹介します。


展示風景

5.働く車のいろいろ……子どもたちの興味は、消防自動車やショベルカー、ダンプカーなどの特別な機能をもった車に集中します。働く車への憧れの強さに応えるように、運搬する車、工事現場の車、消防自動車などが世界各地で玩具化されています。それぞれに個性的なデザインで、お国柄が表れています。
●ものを運ぶ車……ここでは、トラックやダンプカー、タンクローリー、ミキサー車などのものを運ぶ車「貨物自動車」の玩具を集めてご紹介します。実物に忠実に作られた玩具があれば、形を抽象化したデザイン性豊かな玩具もみられます。

   
展示風景


●工事現場の車……クレーン車、ブルドーザー、ショベルカー、コンクリートミキサー、ロードローラー、フォークリフトなど、工事現場の作業車を模して作られた乗りもの玩具の色々です。
 物を吊り上げたり、地ならししたり、地面を掘ったり…、車のもつ特殊な機能を単純化した玩具は、子ども達の、何でも真似てみたい心を満たし、世界中で人気があります。

 
展示風景

 
展示風景

●消防自動車……消防自動車は、火災発生時に、消化活動を行う目的で緊急出動する自動車のこと。19世紀半ば頃、イギリスやアメリカで蒸気消防ポンプ車が発明され、それが元となって欧米社会で発展をみました。日本へ消防自動車が導入されたのは大正時代のこと。消防自動車は、昔も今も、子どもたちの最も高い人気を誇る働く車です。
●救急自動車……救急自動車は、傷病者を病院まで搬送するための車両のこと。自動車のない時代は、人力車や馬車が使われていました。19世紀はじめのナポレオン戦争、同世紀後半のアメリカ南北戦争の折、傷病兵の運ぶ機能をもった車が登場し、それをきっかけにして、世界各地に普及し始めました。日本では、救急車両の色は「白」と法令で定められていますが、オーストリアやスウェーデンでは黄色の救急車が走っています。ここでは、世界の救急自動車の玩具を集めてご紹介します。


展示風景