当館のクリスマス展示は、昨年のNHK教育テレビ「美の壺」で放送されました。

エストニア
キリスト降誕人形
エルサルバドル/木/1990年代

6号館・秋冬の特別展

世界クリスマス紀行
キリスト降誕人形
エジプト/土/1990年代
キリスト降誕人形(プレゼピオ)
イタリア/木・プラスチック・苔ほか/1990年代

2010年10月23日(土) →2011年1月18日(火)

 
東室一部展示風景
 キリスト教世界の人々にとって、クリスマス(降誕祭)はイースター(復活祭)と並んで、一年でもっとも大きな宗教行事のひとつです。クリスマスは、キリストの誕生を祝う行事に違いありませんが、その祝われ方をみると、ヨーロッパが古くから伝えてきた民俗的な祭りの心がクリスマスの中に、深く溶け合っていることがわかります。
 古代ヨーロッパでは、太陽が力を失い、地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に、温かい光の復活を願い、新しい年の豊作を祈る祭を行っていました。これは冬至祭や収穫祭として今も各地に伝えられていますが、キリスト降誕の祝日は、太陽の復活を祝い、豊作を願うという土着の信仰をとり込むことを通して、大きな行事へと発展していったものと思われます。クリスマス飾りに登場するキャンドルの灯や光を象徴する造形の美しさ、また麦わらや木の実などの豊かな実りを表現するオーナメント(=装飾)の多様性からも、クリスマスがもつ意味をうかがい知ることが出来ます。
 やがて、クリスマスの行事はキリスト教の普及とともに世界各地へと拡がり、それぞれの地の信仰や冬の習俗と結びついて定着すると、アジアでもアフリカでもユニークな造形が花開きました。
 恒例となった当館のクリスマス展は、クリスマス飾りを通して世界各地のクリスマス風景を描き、この行事の意味を探る試みです。本年は、世界約50ヶ国のクリスマスに登場するオーナメントを「ヨーロッパ〜北欧・中欧・東欧・南欧〜」「アメリカ〜北米・中南米〜」「アフリカ」「アジア」の地域ごとに展示し、各地のクリスマス飾りの特徴を紹介します。本場ヨーロッパの伝統豊かなオーナメントはもちろんですが、アフリカ州やアジア州の民芸的なクリスマ造形が見どころです。また、当館では取り上げてこなかった、日本の戦前戦後のクリスマス飾りが初登場します。世界各地の民族色豊かなクリスマス飾りが一堂に。遠い国々のクリスマスに思いをはせながら、クリスマス行事の奥行の深さを感じていただければと思います。

■展示品総数 世界50ヶ国1000点
 西室一部展示風景
■展示概要
【北ヨーロッパのクリスマス】………冬の間はほとんど陽がのぼらず、雪や氷に閉ざされる北欧にあっては、太陽の復活を願う古い民俗信仰とキリスト教がとけあった「ユール」と呼ばれる独特のクリスマスが祝われます。暗く厳しい冬、人々は窓辺にキャンドルを点し、清らかな行事の雰囲気を盛り上げて行きます。手工芸が発達した国々とあって、切紙細工や麦わら細工のクリスマス飾りが町中にあふれ、トムテやニッセという名の山羊を連れた妖精たちが活躍する北欧のクリスマスは、ファンタジックな雰囲気に満ちています。
ツリー飾り・白樺細工のオーナメント/フィンランド/木
ツリー飾り・ベル/フィンランド/木

  

【東ヨーロッパのクリスマス】………東欧では、冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリマスが祝われています。チェコやスロバキア、ハンガリー、セルビア、リトビアの麦わらやキビガラ、木の実細工のツリー飾りには、収穫祭との深い結びつきが感じられます。また、小麦パンをかたく焼き締めて作られる“ヴィゾ・ヴィーチェ”と呼ばれるオーナメントやボヘミアグラスのツリー飾りは、東欧伝統工芸の素晴らしさを伝えてくれます。
ツリー飾り・パン細工のオーナメント(ヴィゾ・ヴィーチェ)
チェコ/無発酵パン(小麦粉・塩)
ツリー飾り・麦わら細工のオーナメント/ハンガリー/麦わら・木の実

       

【中央ヨーロッパのクリスマス】………ドイツ、オーストリアなど中央ヨーロッパにおいても、クリスマス・アドベント(=待降節)の平均日照時間は1〜2時間。冬枯れの町には寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットがたち並び、細工をこらしたオーナメントの数々が人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」をイメージしたものです。
ツリー飾り錫細工・フィリングランのオーナメント
ドイツ・バイエルン地方/錫/2000年代
 
●ドイツのクリスマス●………ドイツのクリスマスにプレゼントを運ぶのは、St.ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが、地域によっては鬼を従えてやってきます。クリスマスツリーの本場とあって、豊富な造形が見られる地域です。クルミ割り人形や煙だし人形、“光のピラミッド”の名で親しまれるユニークな燭台やキリスト降誕人形“クリッペ”など、ユニークなドイツのクリスマス飾りをまとめてご紹介します。
ツッヴェッチゲメンライン・St.ニコラウスと鬼と天使
ドイツ・ニュールンベルグ/クルミ・プラム・布
光のピラミッド
ドイツ・エルツゲビルゲ
【南ヨーロッパのクリスマス】………イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには、“サトゥルナーリア”と呼ばれる賑やかな収穫祭の薫りが残されているといいます。また、カトリックが力をもつイタリアは、キリスト降誕人形の発祥した地であり、教育的な意味の加わったクリスマス玩具の色々を見ることができます。イタリアやポルトガルでは“プレゼピオ”、スペインでは“ナシミエント”“べレーン”と呼ばれるキリスト降誕人形を中心に展示します。

  

【北アメリカのクリスマス】………家族団欒を大切にするアメリカのクリスマスは、手作りの味わいに満ちています。オーナメントや待降節のカレンダーも家庭独自のものが選ばれ、温かな雰囲気が漂います。トルコ生まれの聖人・ニコラウスの祭りをベースに、クリスマスのプレゼント配達人“サンタクロース”を誕生させ、世界各国に広めた国らしく、北アメリカのクリスマス飾りには、ユニークな姿態のサンタクロース人形が目立ちます。
ツリー飾り・雪の妖精/カナダ/羽根・マジパン
ツリー飾り・赤い木の実のキャンドルスタンド
アメリカ合衆国USA/木・ブリキ
ツリー飾り・氷柱と氷雫
アメリカ合衆国オハイオ州/ガラス

  

【中南アメリカのクリスマス】………中南アメリカの国々では、ヨーロッパが支配した時代にもたらされたキリスト教と土着信仰とが結びついた民族色豊かなクリスマスが祝われます。インディオが製作した降誕人形(メキシコ・コロンビア・ペルー)や植物繊維を編みこんだツリー飾り(エクアドル)、毛糸細工やブリキ細工のオーナメント(メキシコ)、“ピニャータ”と呼ばれるクリスマス行事用のくす玉など、ヨーロッパとはひと味違ったクリスマス造形を紹介します。南ヨーロッパの影響を受けた地域らしく、キリスト降誕人形が盛んに飾られ、また1月6日の公現節(エピファニー)に登場する三人の博士を模した造形も目立ちます。
ツリー飾り・ブリキ細工のオーナメント
メキシコ・オアハカ州/ブリキ
ミニチュアキリスト降誕人形(プレゼピオ)
ブラジル・ペルナンブコ州/土/1990年代

 

【アジアのクリスマス】………ヒンズー教や仏教などを信仰する国々にあっても、国内のキリスト教徒のため、あるいは輸出用として、ユニークなクリスマス飾りが製作されています。ヨーロッパでは、ツリー飾りには赤い林檎、トナカイ、馬、鳩、モミの木がモチーフとなるところ、アジアではパイナップル、象、魚、クジャク、ヤシの木と、身近な素材が登場するあたりには、文化の交流と変化がしのばれます。
トナカイのそりでやってくるサンタクロース
占領下の日本/セルロイド・ブリキ/1947〜8年
ツリー飾り・ぬいぐるみのオーナメント
タイ/布・スパンコール


【アフリカのクリスマス】………聖書の読めない人々にクリスマスのメッセージを伝えるために中世のイタリアで始められたキリスト降誕劇の箱庭風人形飾りは、カトリックの普及とともにアフリカへ入ると、その地の人々をモデルに、またその地の伝統工芸をベースにユニークな造形へと変化を遂げました。タンザニア、ケニアの東アフリカ地域、ジンバブエや南アフリカ、マダガスカルの南アフリカ地域、カメルーンやナイジェリアの西アフリカ地域のそれぞれからキリスト降誕の風景を表す人形たちを紹介します。
ツリー飾り・ヒョウタン細工(焼き模様)/ブルキナファソ/瓢箪
ツリー飾り・ビーズ細工のオーナメント
南アフリカ/針金・ガラスビーズ
ツリー飾り・天使とサンタクロース/ケニア/バナナ木皮・サイザル麻

   


『世界クリスマス紀行』
関連催しのご案内
■展示解説会■

世界各地のクリスマス飾りの特徴について、展示品を取り出しながらご案内いたします。解説者は、当館学芸員の尾崎織女が行います。

●日時………11月23日(祝)・12月5日(日)
         12月12日(日)・19日(日)
         12月23日(祝)   ※各回14時〜


■絵本朗読会■

クリスマスに登場する人形やオーナメントを主人公にした物語を本会場で朗読します。絵本の世界に親しみながら、クリスマス飾りの文化的背景を広げていただけることでしょう。朗読者は、昨年に引き続き、倉主真奈さんです。

●日時………12月19日(日)・23日(祝)
         ※各回 11時〜/13時30分〜


■ワークショップ『麦わら細工のヤギを作ろう』■

北欧や東欧のクリスマス飾りには、麦わらを細工した造形が数多く登場します。それらを参考に、麦わらを使って、素朴で可愛らしいヤギを作ります。※申し込み制

●日時………12月4日(土) 13時30分〜15時