*日本玩具博物館・冬の特別展*

世界のクリスマス
Christmas Around the World

●会期=2018年10月20日(土)~2019年1月20日(日)
●会場 日本玩具博物館6号館

 古代ヨーロッパでは,太陽が力を失い,地上の生命力が衰えた冬枯れの季節に,暖かく明るい光の復活を願い,新しい年の豊
作を祈る祭を行っていました。これは冬至祭や収穫祭として今も各地に伝えられていますが,キリスト降誕の祝日は,太陽の再生を祝い,豊穣を願う土着の信仰をとり込むことを通して大きな行事へと発展していったものと考えられます。
 クリスマス飾りに登場するキャンドルの灯や光を象徴する造形の美しさ,また麦わらや木の実などの豊かな実りを表現するオーナメント(=装飾)の多様性からも,クリスマスがもつ意味をうかがい知ることができます。また,この時期,世界各地のサンタクロースをはじめ,プレゼントを持った様々な姿の贈り物配達人が訪れ,新しい年の豊作と幸せをもたらしていくのですが,それらは好んで人形化され,クリスマスという冬の祭礼の喜びと意味深さを伝えています。
 恒例となった当館の世界のクリスマス展は,クリスマス飾りを通して世界各地のクリスマス風景を描き,この行事の意味を探る試みです。本年は世界約60の国や地域のクリスマスに登場するオーナメントを「ヨーロッパ〜北欧・中欧・東欧・南欧」「アメリカ〜北米・中南米」「アフリカ」「アジア」の地域ごとに展示し,各地のクリスマス飾りの特徴を紹介します。各地のオーナメントで彩られた“ツリーの森”のような展示室をお楽しみください。
 また本年は,日本のクリスマス飾りにも改めて注目し,明治末期から作り始められた日本製のツリー飾り,大正時代や昭和時代の児童雑誌やサンタクロース人形などを通して,日本人に広くクリスマスが受け入れられていく様子を探ってみたいと思います。


■展示品総数 世界60ヶ国1000点


北ヨーロッパのクリスマス
 冬の間はほとんど陽がのぼらず,雪や氷に閉ざされる北欧にあっては,太陽の復活を願う古い民俗信仰とキリスト教が融合した“ユール”と呼ばれる独特のクリスマスが祝われます。人々は窓辺にキャンドルを点し,厳かな行事の雰囲気を盛り上げていきます。切紙細工や麦わら細工のクリスマスオーナメントは,冬の手工芸が発達した地域ならではの繊細さとデザイン性の高さが特徴です。トムテやトントゥ,ニッセといった妖精たちがヤギを連れて活躍する北欧のクリスマスはファンタジーに満ちています。
   
東ヨーロッパのクリスマス
 東欧では,冬至祭や収穫祭に結びついた民族色豊かなクリスマスが祝われています。チェコやスロバキア,ハンガリー,セルビア,ウクライナの麦わらやキビガラ,木の実を細工したツリー飾りには,収穫祭との深い結びつきが感じられます。また,小麦パンをかたく焼き締めて作られるオーナメントやボヘミアグラスのツリー飾りは,東欧伝統工芸の素晴らしさを伝えてくれます。
 
中央ヨーロッパのクリスマス
 ドイツ,オーストリアなど中央ヨーロッパにおいても,クリスマス・アドベント(待降節)の平均日照時間は1~2時間。冬枯れの町には寂しさを払うようにモミの木の緑とキャンドルの光があふれます。町の広場にはクリスマス飾りを売るマーケットが立ち並び,細工をこらしたオーナメントの数々が人々を温かく出迎えます。きらきら輝く麦わらの窓飾りや経木のツリー飾りは「光」をイメージしたものです。
ドイツのクリスマス
 ドイツのクリスマスプレゼントを運ぶのは,St,ニコラウスやヴァイナッハマンと呼ばれる聖人ですが,地域によっては鬼を従えてやってきます。クリスマスツリーの本場とあって,豊富な造形が見られる地域です。クルミ割り人形や煙だし人形,“光のピラミッド”の名で親しまれるユニークな燭台,キリスト降誕人形“クリッペ”など,おもちゃの国・ドイツのクリスマス飾りを一堂にご紹介します。

南ヨーロッパのクリスマス
 イタリアをはじめとする南欧のクリスマスには,“サトゥルナーリア”と呼ばれる賑やかな収穫祭の薫りが残されているといいます。また,カトリックが力をもつイタリアは,キリスト降誕人形発祥の地であり,教育的な意味の加わったクリスマス玩具を見ることができます。イタリアやポルトガルでは,“プレゼピオ”,スペインでは“ナシミエント”“ベレーン”と呼ばれるキリスト降誕人形を中心に展示します。
 
北アメリカのクリスマス
 家族団欒を大切にする北部アメリカのクリスマスは,手作りの味わいに満ちています。オーナメントや待降節のカレンダーも家庭独自のものが選ばれ,温かな雰囲気が漂います。トルコ生まれの聖人・ニコラウスの祭りをベースに,クリスマスのプレゼント配達人“サンタクロース”を誕生させ,世界各国に広めたのはアメリカ合衆国です。北アメリカのクリスマス飾りには。ユニークな姿のサンタクロース人形が目立ちます。
中南アメリカのクリスマス
 中南部のアメリカでは,ヨーロッパが支配した時代にもたらされたキリスト教と土着信仰とが融合し,民族色豊かなクリスマスが祝われます。インディオが製作した降誕人形(メキシコ・コロンビア・ペルー)や植物繊維を編み込んだツリー飾り(エクアドル),毛糸細工やブリキ細工のオーナメント(メキシコ),“ピニャータ”と呼ばれるクリスマス行事用のくす玉(メキシコ)など,ヨーロッパとはひと味違ったクリスマス造形を紹介します。南ヨーロッパの影響を受けた地域らしく,キリスト降誕人形が盛んに飾られ,また,1月6日の公現節(エピファニー)に登場する三人の博士を模した造形も目立ちます。
 
中東・アフリカのクリスマス
 聖書を読めない人々にクリスマスのメッセージを伝えるために中世のイタリアで始められたキリスト降誕劇の箱庭風人形飾りは,カトリックの普及とともにアフリカへ入ると,その地の伝統工芸をベースにユニークな造形へと変化を遂げました。タンザニア,ケニアの東アフリカ地域,ジンバブエや南アフリカ,マダガスカルの南アフリカ地域,カメルーンやナイジェリアの西アフリカ地域にわたり,各地のキリスト降誕の風景を紹介します。
 マリア,ヨゼフ,イエス,三人の博士,羊飼い,動物たち−−−厩(うまや)の中のお馴染みの人物が土地の人々の表情に似せて作られているのも興味深く,それぞれの造形感覚のすばらしさが光っています。
アジア・オセアニアのクリスマス
 ヒンズー教や仏教などを信仰する国々にあっても,国内のキリスト教徒のため,あるいは輸出用として,ユニークなクリスマス飾りが製作されています。ヨーロッパでは,ツリー飾りには,赤い林檎,トナカイ,馬,鳩,モミの木がモチーフとなるところ,南アジアではパイナップル,象,魚,クジャク,ヤシの木と身近な素材が登場するあたり,文化の融合と土着化が感じられます。
日本のクリスマス
 日本で初めてクリスマスが祝われたのは戦国時代。イエズス会の修道士によって伝えられたものと考えられます。その後キリスト教禁止令や幕府の鎖国政策を経て,日本人がクリスマスと再会するのは明治時代初年のこと。明治7年には,日本人の手によるクリスマス会が開かれ,サンタクロースも登場します。明治末期から大正時代,大都市部に百貨店が誕生すると,サンタクロースは,歳末の贈り物配達人となって活躍をはじめます。また,明治末期,居留地の外国の要望に応えて紙・木・ガラス・アルミ箔などの素材からクリスマス飾りが製造され,それらの多くは欧米へと輸出されていました。バラエティに富んだ日本の商品は長く国内外で愛されてきたのです。大正末期から昭和初期の児童雑誌に描かれたクリスマス風景や,昭和の戦前戦後に日本の家庭に飾られていたツリー飾りとともにご紹介します。
     


クリスマス展ギャラリートークのお知らせはこちらのページをご覧ください。

クリスマス展ワークショップのご案内はこちらのページをご覧ください。