日本玩具博物館 館長室・学芸室から

●館長室から
NO49
政府広報誌『キャビネット』1月号に掲載されました       (2010年1月1日 井上 重義)

 新年明けましておめでとうございます。
 厳しい経済情勢を反映して、博物館を取り巻く状況は好転の兆しが見えませんが、当館には新春早々、嬉しいニュースが舞い込みました。政府広報誌『キャビネット』1月号の「旬の人時の人」に取り上げられました。内容は「国内屈指の凧あげ祭りの開催で、町に新たな文化と活力を」と題して、1975年以来、当館が開催してきた全国凧あげ祭りが見開きで大きく紹介されました。
 この全国凧あげ祭りは当館が開館した翌年の新春から、日本各地に伝わる和凧の素晴らしさの紹介と子供たちに凧揚げの楽しさを伝えたいと始めましたが、当館の成長と共に大きく発展。伝統的な凧揚げ行事がなかった地で、一歩一歩歴史を刻み、大勢の協力もあって新春の凧揚げ行事としては国内屈指のものに成長したのです。
 今年は1月10日(日)に開催しますが、当館の呼びかけに応えて、全国各地から400人もの凧愛好者や保存会の皆様がご参加くださいます。特に今回は初参加者が多く、新潟、能登半島、神奈川、静岡、山梨、長野、愛知、奈良、京都、大阪、隠岐の島、山口、徳島、香川、長崎などのほか、地元兵庫からも大勢が自慢の凧を持って参加されます。天候に恵まれれば青森県の津軽凧から長崎県五島列島のバラモン凧まで日本各地の珍しい伝統凧が新春の空を美しく彩り、例年どおり私が揚がった凧を解説。大空を舞台にした伝統凧の競演が繰り広げられます。4日頃にはどのような凧が参加するか速報を流しますので詳しくはそれをご覧下さい。
新潟六角凧と愛媛五十崎の凧 六角凧と鬼ようず 長崎五島列島のバラモン凧 徳島のわんわん凧
津軽凧 讃岐のつり鐘凧
 また時事通信社からの依頼でこの1年間、毎日、「ふるさとの玩具」と題して、写真と180字ほどの文章で、日本各地の郷土玩具を紹介する事になりました。10日ごとに10回分の原稿を届け、1月中の原稿は届けましたが、この一ヶ月余り、そのことで頭がいっぱいでした。大変な仕事であることを実感しています。
 引き受けたのは、日本各地の郷土玩具の多くが後継者もないままに廃絶の途を辿り、その情報も流れることが少なく、忘れられようとしている現状から、多くの皆様に郷土玩具の素晴らしさを伝えることが必要だと考えました。それに私の玩具収集の原点は郷土玩具であり、人生最後の大仕事として郷土玩具のために役立ちたいと思ったからです。

 今年も仕事に追われる毎日となりそうです。
 変わらぬご指導とご支援を賜りますよう心からお願い申しあげます。

第36回凧あげ祭りについての詳細ページ


NO48
日本一の虎玩具展によせて                 (2009年11月22日 井上 重義)

 昨日から1号館で「日本一の虎玩具展」が始まりました。予定では約350点を展示するところが、それが500点を超え、会場は
広島の首振り虎(昭和8年)
まさに虎尽くし。賑やかな展示になりました。
 総数では1000点を超える虎コレクション中から選んでの展示となり、選ぶのにも時間がかかり、作業日の17・18日の両日とも終わったのは午後12時前。いつもながらスタッフの熱意に頭が下がります。

 タイトルの「日本一」は少し大袈裟ではないかとの意見もありましたが、これだけの貴重
大正10年の神農さんの虎
神農さんの虎の腹部の文字
な虎の玩具が並ぶのは国内では他に例がないでしょうし、それに日本一の虎コレクターとされていた長尾さんを顕彰するためにも「日本一の虎玩具展」が相応しいということになったのです。12年ぶりの展示ですが、改めて資料の貴重さを認識し、これほどの資料が一個人の手で収集され遺されたことに感動を覚えました。
 とりわけ第2次世界大戦以前に廃絶した、「幻の虎玩具」と言っても過言でない貴重な資料が多いのです。岩手県気仙高田の首振り虎、宮城県気仙沼土人形の虎、東京の西新井の首振り虎、長野県松本の首振り虎、新潟県三条の首振り虎、広島県広島の首振り虎、徳島県徳島の張り子の虎、福岡県柳川の虎車、沖縄県那覇の虎など、恐らく現地でも残る作品が無いか、あっても大変少ないと思います。

 長尾さんが収集を始められたのは大正10年、今から88年前です。大阪の神農さんの虎との出会いが契機ですが、その記念すべき虎もコレクションの中にありました。収集品の虎のお腹には、その殆んどに産地名と収集年が達筆な文字で書かれて
金沢の虎(左:昭和8年/右:昭和40年)
います。「昭和5年 静岡」「昭和12,7 東京亀戸」など、それにより収集時期と産地が判明し勉強になりました。例えば、来年の80円切手のデザインに選ばれた金沢の虎ですが、今のものと昭和初期のものとでは顔の描き方に違いがあるのです。それに虎を北から南へ地域毎に並べると、不思議なことに静岡以東のものには胴に渦巻模様が多く見受けられ、名古屋以西のものは渦巻き模様が全くないのです。
 館長室からのNO26で、達磨が東日本と西日本ではいろんな違いがあり、西日本には鉢巻を締めた達磨が、また目無し達磨は東日本に多いなど、地域による特色があると申しあげましたが、虎にも同じようなことがいえるのです。ご覧いただくと、なるほどと言っていただけると思います。私にはその理由が分かりませんが、東日本文化と西日本文化があるのでしょうか。



渦巻き模様のある虎、左から金沢・静岡・会津若松 縦の模様の虎、左から宇土(熊本)・姫路・高松
 当館の日常の活動が評価され、長尾コレクションのほかにもこれまでに貴重な資料をいくつも託されました。それらの評価を高めると共にきちんと後世に伝えることが、今後の大きな課題だと考えています。



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