●日本玩具博物館学芸室から
NO.85
佐野美術館行き準備完了! (2010.2.8 学芸員・尾崎織女)
来る2月20日より、日本玩具博物館のちりめん細工コレクションが勢揃いする展覧会が、静岡県三島市にある佐野美術館で開かれます。ここ数年間にわたり、当館では、「ちりめん細工の世界」と題する展覧会を、各地で開催してきました。2006年夏の京阪百貨店ギャラリー(大阪府守口市)、2007年春のたばこと塩の博物館(東京都渋谷)、同年秋の日本絹の里(群馬県高崎市)、2008年冬の小倉城庭園(福岡県北九州市)と続き、2009年初夏の日本絹の里では再び、企画を変えて展示会を持ちました。各地でご好評をいただき、私たち自身も、展覧会の度、「ちりめん細工」という手芸に対する理解を深められること、ありがたく思っています。
今回、展示させていただく佐野美術館は、日本刀、青銅器、陶磁器、能面、絵画、書などの美術工芸品を所蔵展示する老舗の私立美術館です。普段は、絵画や書、日本刀の名品がしっとりと収まる企画展示室に、この春は、当館のちりめん細工コレクションをずらりと並べ (600点の展示を予定しています)、三章仕立てで日本の伝統手芸の世界をご紹介してまいります。
第一章「江戸と明治のちりめん細工」では、江戸時代後期、上流階級や大都市部の富裕な人々の間で作られ使用された「ちりめんのお細工物」について、また、それが明治時代に入り、女学校の教材として受け継がれていく様子を当時の作品群を通してご紹介し、「用と美の袋物」「花と鳥・動物の小袋」「魔よけと招福の巾着」「遊び心の小箱や懐中物」などのグループにわけて、その製作目的や使用目的、意味について考えていきます。
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| 松に日の出・鶴の親子の袋物 (きりばめ細工)/明治中期 |
八重椿袋/明治末期 | 芍薬袋/明治末〜大正期 | 鶏の親子袋/明治中〜末期 |
第二章「よみがえったちりめん細工」では、当館が古作品や文献の蒐集を行い、それらの復元作業を通して誕生した平成時代のちりめん細工作品を、春夏秋冬、四季の彩りの中でご紹介します。また、現在の暮らしの中でちりめん細工を楽しむ提案のひとつとして、井上館長の指揮のもと、「日本玩具博物館ちりめん細工の会」のメンバー約150名が協働で作り上げた華やかな「ちりめん細工の傘飾り」もずらり、ご紹介いたします。
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| ↑プロフィールが愛らしい新作品のいろいろ 傘飾りの展示シミュレーション風景→ |
そして第三章「子どもの着物と子育てのお細工物」では、初宮参りや節句や祭礼、成長儀礼の折に身につける着物や帽子や涎掛け、また子どもの無事成長を祈って製作された守り袋(巾着)や、人形袋、迷子札など、親たちの愛情が伝わる造形の色々をまとめてご紹介したいと思っています。
新春より、私たちは準備室の一角にこもって作業に明け暮れておりました。佐野美術館の展示ケースに合わせてシミュレーション展示をしたうえで、展示品を決定し、梱包し、パッキングし、説明パネルやキャプションなどを製作する一方、小さな展示台(大小300個以上!)などを用意していくのですが、それらに加え、細かな作業は数限りなくあるのです。すべての準備が完了し、発送手配も済ませましたので、あとは、展示作業に出向くだけの手はずとなりました。2月17日から井上館長、笹竹学芸員とともに出張し、先方の学芸スタッフの皆さんと一緒に、楽しく温かなムードの展示を完成させたいと思っています。
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| ↑玩具館特製・展示台。菓子箱を黒クロスで包んでいます。 菓子箱は寸法が決まっていないので、小さな資料をのせて 飾るのに結構、有用です。 ←展示の準備風景。展示品を決定する作業。 |
折りしも、雛祭りの季節。佐野美術館の一室では、ちりめん細工の展示期間、享保雛をはじめ麗しいお雛さまの数々が展示されますし、同じ静岡県伊豆の稲取に足をのばせば、「つるし雛」が賑やかに飾られていることでしょう。
お近くの方は是非、そしてご遠方の方々には雛巡りの旅を兼ねて、どうぞ三島の佐野美術館をお訪ね下さいませ。展覧会期は、2月20日から4月5日まで。休館日は、毎週木曜です。
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NO.84
天保の頃の雛まつり (2010.2.3 学芸員・尾崎織女)
博物館の庭では、馥郁としたロウバイの香りに沈丁花の涼やかな匂いが混じりあい、マンサクやサンシュユ、キブシなど木々の花芽も膨らんで、春の息吹がいっぱいです。エナガの群れとメジロのつがい、雌のジョウビタキにシジュウカラ、時にはヤマガラもやってきて、木々の間を飛び交っています。
エナガ
学芸室では、新春早々、佐野美術館(静岡県三島市)で開催する企画展『ちりめん細工の世界〜ぬくもりの布遊び〜』(2010年2月20日〜4月5日)の準備に勤しんでおりまして、こちらでのご挨拶が大変遅くなりました。本年は、館外でも大きな展覧会の開催を予定していますが、館内においては、1号館で5回、6号館で4回、合計9回の企画・特別展を計画しています。節句や祭礼をめぐる子ども文化について、また、四季折々の人形玩具の世界を楽しくご紹介してまいりたいと思っています。どうぞご期待下さいませ。
さて、今週末の2月6日より、当館恒例の雛人形展をオープンいたします。先月末から深夜の展示作業を続けて華やかな会場が出来上がりました。年を追って「雛飾り」を演出する屏風や諸道具なども充実し、学芸スタッフたちも年々、雛飾りに熟練して、隅々にまで神経を行き渡らせた展示が出来るようになってきた・・・と振り返っています。果たして、ご来館いただく皆さまには、どのように感じられるでしょうか。
今春のテーマは『江戸から昭和のお雛さま』。「江戸時代後期の雛人形」として、立ち雛、享保雛、古今雛の屏風飾りを、「明治時代の雛人形」として、大型雛の段飾りと質実堅牢な檜皮葺御殿飾りを、「大正時代から昭和時代初期の雛人形」として、小型雛の段飾り、軽快可憐な御殿飾りや源氏枠飾りをすでに展示致しました。また、ランプの家には、昭和中期の御殿飾りや昭和後期の木目込雛の段飾りなどを展示する予定です。
今回、新たにご紹介するものの中に、香蝶楼国貞(歌川国貞)の浮世絵があります。『風流古今十二月ノ内 弥生』と題された三枚続きの画面には、座敷に飾られた雛人形のもとで、節句の祝いを楽しむ人々の様子が活き活きと描かれています。国貞が「香蝶楼」と名のっていた頃、天保年間(1830〜43)の作品。月並のシリーズとして有名ですから、ご存知の方も少なくないと思われますが、少し詳しく画面を見てみましょう。

画面下手、大きく生けられた桜と山吹の花枝のもと、背の高い屏風を背景に雛人形の段飾りが見えます。緋毛氈の上、上段の内裏雛は、親王台の部分しか描かれていませんが、その様式は、当時、すでに流行していた「古今雛」でしょうか。二段目には、五人囃子の謡、笛、小鼓の三人の奏者が見えています。三段目と四段目には、桃酒の瓶子をのせた三方、供え物が盛られた高杯など、金蒔絵が施された黒漆塗りの雛道具が置かれています。菱台に盛られた菱餅は、現在のものとは違って、草色と白の二色が重ねられています。
私たちが親しんでいる一般的な五段飾り雛や七段飾り雛と比べると、国貞が描いた四段飾り雛は、のびやかに自由、発展段階にあるようにも思えます。「内裏雛」(お内裏さまとお雛さま)に仕える「三人官女」「随身(右大臣・左大臣)」「仕丁(三人上戸)」が上方出身の添え人形であるのに対して、「五人囃子」は江戸出身だとされていますが、江戸時代終わり頃の江戸町では、内裏雛とともに、能楽を奏でる五人囃子が飾られていたことが、この浮世絵からもわかります。
人々の様子を見てみましょう。雛料理が盛られた黒漆塗り金蒔絵の小膳を子どもたちに振る舞おうとしている母親、お膳を囲んで挨拶を交わす子どもたち、桃酒の杯を三方にのせて歩いている子ども(こぼしそうですね!)、その腰元には大きな「守り袋(巾着)」がぶら下がっています。「立ち雛」を持ち遊ぶ子ども、赤ちゃんを抱いた若い娘、桜の花が咲き乱れる庭にはおしどりが泳ぎ、画面上手の縁側から座敷に上がり込もうとする子どもも居ます。わいわい賑やかな声が屋外に響きわたるような、愉しさがあふれ出すような画面です。
江戸型古今雛と五人囃子(江戸時代後期)
花の香り、お料理の匂い、子どもたちの歓声、「お行儀よくしなさいよ」とたしなめる母親たちの声……。見るものの五感が刺激され、江戸町で発展を続ける桃の節句の愉しさが、画面を越えて、どんどんと拡がっていく素晴らしい作品ですね。
展示室には、この浮世絵とともに、天保頃の作と思われる江戸製古今雛の段飾りを展示いたしました。また、江戸時代後期の雛人形を合計10組、展示していますので、香蝶楼国貞の浮世絵の世界に照らし合わせてご覧下さいませ。
「学芸室から」では、あと3回、各時代の雛飾りについてご紹介したいと思っています。引き続き、お付き合い下さいますようお願い致します。
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学芸室2009後期 学芸室2009前期 学芸室2008後期 学芸室2008前期 学芸室2007後期
学芸室2007前期 学芸室2006後期 学芸室2006前期 学芸室2005
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〒679-2143 |
参考
世界のクリスマス,オーナメント、サンタクロース、降誕人形、光のピラミッド、キャンドルスタンド、ニコラウス、アドベントカレンダー、麦わら細工、煙だし人形