NO. 228
ちりめん細工の今昔展、再び
                                  2018.4.27 学芸員・尾崎織女)
東京が記録的な積雪に見舞われた大寒のさなかにオープンしたたばこと塩の博物館での「ちりめん細工の今昔」展は、多くの方々に愛していただき、去る4月8日、無事に会期を終えました。来館者数は66日間に2万2千人を超え、嬉しいことに2回、3回と繰り返し来場される方の感動の声が、電話やメールを通して私どもにも届けられました。ご来場下さいました皆様からのお便りからは、今昔の女性たちの自然に接する繊細な感性や、婚礼や出産、子育てなどの場面に登場するお細工物に込められた祈りの心を受けとめていただけたことがよく感じられ、本当に嬉しく思っております。
終了後は、たばこと塩の博物館の学芸スタッフの方々とともに数日間かけて梱包、撤収作業に精を出し、117ヶ口の梱包物の搬出を行いました。4月上旬の東京は、桜に若葉が萌え、紅白の躑躅が街路に咲き乱れ、アメリカハナミズキがビルの空を押し上げる明るい初夏――思いをかけて懸命につくり、そこに人々が集って何かが生まれ、やがて時満ちて形を解かれていく様は、どこか劇場的だと、真っ白の空間に戻っていく広い展示室を眺めてしみじみいたしました。
撤収作業風景   117ヶ口に及んだ梱包物 真っ白な空間に戻った展示室
さて、東京から無事に戻ってきた1000点をこえる展示品をまた開梱し、4月17日から一週間ほど深夜仕事を続けて、当館の6号館と3号館に、再び「ちりめん細工の今昔」展を準備いたしました。たばこと塩の博物館において、総延長75メートルの展示ケースに目いっぱい収まっていた展示品の約9割が、総延長43メートルの我が館に展示できてしまう不思議……。展示グループを組み替え、平成のちりめん細工を展示するゾーンには、今春、日本ヴォーグ社より刊行された『季節のつるし飾りとちりめん細工』の掲載作品を新たに合わせましたので、また違った雰囲気で作品を味わっていただけるのではないかと思います。
展示風景・・・バラ色の解説パネルは原田学芸員がデザインしてくれました。展示空間が華やかに見えます。
展示準備を行っている最中、日本玩具博物館のちりめん細工展のためにと、幸便に託して素晴らしい贈り物が届きました。それは――たばこと塩の博物館の湯浅淑子主任学芸員がちりめん細工展に合わせて個人的に収集しておられた浮世絵で、幕末から明治時代の女性たちとお細工物との関わりがよく示された資料です。十年越しの企画展がよいものになるよう長い期間心にとめて準備して下さった、湯浅学芸員のお気持ちを非常に嬉しく思っておりましたのに、さらに大事な資料を私どもにお預け下さるご厚意と信頼、友情に感激しています。心より御礼申し上げます。
いただいた3枚の浮世絵は、歌川国芳の「大願成就有ケ瀧縞(鳴神)」(天保14~弘化4/1843~47年頃)、豊原国周の「当世見立 十六むさし 楊枝差し」(明治4/1871年)、三代歌川国貞の「俤げんじ五十四帖 四十二 匂宮」(慶応元/1865年)です。この度の当館の企画展には、【江戸文化の薫りを伝えるちりめん細工】のコーナーに2枚をご紹介いたしました。誰袖がデザインされた楊枝差しや花独楽などと合わせてご覧いただくと、150年ほど前の時代を生きた女性たちの息吹を身近に感じていただけるものと想います。退色の恐れがある資料ですので、展示期間は5月31日までと、会期終了前の9月11日から10月8日までとさせていただきます。
 
 【江戸文化の薫りを伝えるちりめん細工】のコーナー   歌川国芳の「大願成就有ケ瀧縞(鳴神)」のお細工をする女性(左)と
  豊原国周「当世見立 十六むさし」の楊枝差しをもつ女性(右)

                       
市川の堤に雉が鳴き、牡丹の花が豪華に開花する美しい季節――初夏の風情に合わせて、ちりめん細工の世界の花鳥風月をお楽しみいただけたら幸いです。
   
  雉(オス)と雉袋(平成20年代) 
   
 牡丹の花と牡丹の花袋(平成20年代) 


NO. 227
おもちゃ学事始め
                                  2018.4.17 学芸員・原田悠里)
学芸室からこんにちは。昨年の神戸・KIITOでの館外展を経て、今年から姫路の本館でお世話になることになりました、原田悠里(はらだゆり)です。新人学芸員として、日々奮闘しております。そんな学芸員の仕事の様子もちょくちょくとみなさまにお伝えしてゆけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、4月です。春爛漫の館に京都光華女子大学こども教育学部、79名の新入生のみなさんがお越しくださいました。学部のオリエンテーションの一環ということもあり、事前に先生方とも打ち合わせをさせていただき、玩具博物館では、自由見学とともに子ども教育学の視点も入れた、おもちゃの世界へのご案内を提案させていただきました。
まず、79名の大人数なので、①1号館、2号館、3号館の見学、②4号館、6号館の見学、③「館長のおもちゃづくり講座」と3つのグループに分かれて、順次交代しながら、館内を見学。その際①、②の見学では、少しお話をしながら「おもちゃ学事始め」と題したワークシートに5つの問いを用意しました。例えば、問1は、「車輪のついたおもちゃには、押して遊ぶものと引っ張って遊ぶものがありますが、それぞれの特徴からあなたならどちらを小さな子どもに選びますか」、と現在1号館で開催している世界の乗り物玩具の中から実際に玩具を取り出しながら尋ね、問3では、プレイコーナーで遊びながら、「2歳から5歳ぐらいの子どもたちが遊び始めたら止まらない、鉄琴がついたドイツのクーゲルバーン(玉転がし)の魅力は何でしょうか」と考えていただきました。
「ハイハイの子には押す方がいいけど、立つようになったら引っ張る方がいい」、「引っ張る方が一緒に歩いている気持ちになる」、「玉を穴に入れるのが楽しい」、「音が聴きたくて何度も遊ぶのかな」などと思い思いに答えてくれました。
これらにはいずれにも正しい答えはありません。「おもちゃ」を身近な視点(子ども教育)から新たに捉えてもらえたらという想いと、必ずしも決まった答えにたどり着く必要がない学びを大学では大事にしてほしいという考えから、尾崎学芸員とともにこのようなワークシートを作成しました。

館長のおもちゃづくり講座 2号館でいろいろなこままわし。どのこまがいい?
大学に入学して10日ちょっと。大学生活への期待に胸膨らませている学生さん、まだまだふわふわと心が浮き立っている学生さん、子どものようにおもちゃではしゃぐ学生さん、と、いろいろな表情が見えましたが、答えのない問いに接し、一瞬目を見開いた彼女たちに、少しばかり人生の先輩として、大学生活の中で、またそこでは見つからなかったならさらに、社会に出た時にでもそれぞれに答えを出していただけたらとお伝えました。

さぁ!わたしも日本玩具博物館に来て、今年から本格的なおもちゃ学事始めです。どんな視点からおもちゃをのぞいてみようかしらん。

見開き2ページの「おもちゃ学事始め」表紙と裏表紙 5つの問いを用意しました。


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