1号館・冬の企画展

日本のコマ・世界のコマ

●会期  2012年11月17日(土)→2013年2月12日(火)
だるま当てコマ(福島県) 人形コマ(ドイツ)

 人間の遊び道具である玩具には、大きく分けて二つのグループがあります。一つ目は、人形や動物玩具、乗り物玩具、ままごと道具などのように人間社会の模倣から誕生したグループ、二つ目は、コマやまり(ボール)、けん玉、凧、おはじきなどのように、遊び道具として、あるいは遊び以外の呪術的な目的をもって創造されたグループです。
 本展では、二つ目のグループの中から「コマ」を取り上げ、日本のコマの歴史や地域性を紹介する一方、世界各地に分布するコマを総覧して、世界で愛されるコマの魅力をご紹介します。展示総数400点のコマづくし。新春にふさわしい展覧会です。

●コマのはじまりについて●

 では、コマは、いつ、どこで、誰によって発明されたのでしょうか? その答えのすべては今のところ明らかにされていません。例えばコマは、木の実が枝から落ちてクルクルと回転する、そんな動きに霊感を得た古代の人間が創造したものかもしれません。
世界の国の伝承玩具を見渡してみると、中南米には瓢箪や植物の種を使ったひねりゴマがあり、太平洋の島々には大きなドングリの鳴りゴマがあります。日本の子どもたちも秋が来ると、クヌギやアベマキのドングリに楊枝を刺して、小さなコマを作ります。そんな素朴な遊びの中に、古代のコマの姿が保存されているのではないでしょうか? 
実物を探せば、古代エジプトや古代インダス、古代ギリシャの遺跡から発見され、世界各地の博物館に収まった石や土や木製の独楽が、紀元前12世紀の大昔にすでに今と変わらぬ姿で存在していたことを教えてくれます。
ブラジル パプアニューギニア インドネシア ブルキナファソ



●文献でたどる日本のコマの歴史●

 コマは、文献の上では平安時代以前に中国から朝鮮半島を経て、伝わったとされています。平安時代に書かれた『倭名類聚抄』によると、「こまつくり」と呼ばれ、「孔がある」との記述から、鳴りコマの形状が想像されます。コマが回る時に発する音によって占いが行われていたという説、うなり音に魔よけの霊力を求めたとの説もあります。
 さて、南北朝時代の『太平記』には、「独楽回しして遊ぶ童の中で、10歳ほどになる者が俄かに物に狂って・・・」との記述があり、貴族社会のコマが民間へ広がっている様子が伺えます。形や回し方に多くのバリエーションが誕生するのは、都市部を中心に商品経済が展開をみせ、庶民階級が力を持ち始める江戸時代のことです。糸をかけて回す博多ゴマ、ベーゴマの前身となる貝ゴマ、指先でひねって回す花ゴマや銭ゴマ、ムチで叩いてまわす叩きゴマなど、コマ回しは、全国各地の庶民の間に流行を見ます。コマ回しは、男児の遊びと位置づけられ、また長く元気に周り続けるコマの姿は新春の縁起物として歓迎されるようにもなりました。 
明治のばい(貝の独楽)と博多ゴマ ベーコマ ぶちコマ
  
●日本のコマの地域色●

江戸時代後期になると、日本各地で土地に根ざしたコマが生まれます。東北地方には雪を固めながら回すのに適した「ずぐりゴマ」をはじめ、木地師がロクロを回して作る木地ゴマがあり、関東地方には、洒脱な形と華やかな色合い、からくりの要素をふんだんにおり込んだ美しい江戸ゴマがあります。関西地方には古代の形を伝える竹鳴りゴマが残され、九州地方には砲弾型の「けんかゴマ」や紐を使って空中で回す皿型の「ちょんがけゴマ」があります。雪深い風土、洗練された都会、鎖国時代にあっても中国大陸や南欧の影響を受けやすかった南国…とコマの形にも地方色が表れるのです。日本が「コマの宝庫」と世界から評される所以です。

  

ずぐりコマ(青森県) りんご鳴りコマ(宮城県) 大山コマ(神奈川県) 江戸コマ
今治のコマ(愛媛県)
佐世保コマ(長崎県) 伊勢の鳴ゴマ(三重県)

●世界のコマと回し方のいろいろ●

 コマは日本だけの玩具、と思いがちですが、実は、紀元前数千年の大昔から世界中の人々に愛され続けてきたものです。ここでは、アジア、 中近東と北アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカの5地域に分けて、その地その地に伝承されてきたコマの形を紹介します。
 南ヨーロッパ、北アフリカ、南アメリカに数多く分布する砲弾型のコマが、九州北部の郷土ゴマの形に似ていることも興味深いことです。
 大航海時代を経て、スペインやポルトガルなど南ヨーロッパのコマが  世界各地にもたらされた可能性が伺えるからです。
 世界のコマの回し方を大まかに分類すると、指先で軸をひねって回す小さな「ひねりゴマ」、両手で軸をもみ合わせて回す「もみゴマ」、巻き付けた糸をひっぱって回す「糸ひきゴマ」、糸を巻きつけコマを放り投げて回す「投げゴマ」、ムチでコマを叩きながら回す「叩きごま」などがあります。
 世界のコマの形や回し方を、互いに比較することで、地域どおしの結びつきやかつての文化圏がみえてくるかもしれません。

  

投げゴマ(韓国) 投げゴマ(インド) 投げゴマ(グルジア) 投げゴマ(パキスタン)
投げゴマ(ポルトガル) 投げゴマ(ブラジル) 糸ひきゴマ(イギリス)
糸ひきゴマ(メキシコ)

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