サーロクーツの民族人形
(ハンガリー)
●日本玩具博物館40周年記念・夏の特別展●

世界の国の人形

■会期  2014年6月21日(土) → 10月14日(火)
■会場  日本玩具博物館6号館
ザンゲ人形(カメルーン)

人形の歴史は、人間の歴史とともにあります。古代に登場する人形は、神や精 霊の「依り代(よりしろ=神霊が依り憑く対象物)」として、また人間の「形代(かたしろ=人の形を型どったもの)」として、災厄をよけ、安産や豊作の祈願などに用いられ、お守りとしての役割を果たしていまし

カオ族の風俗抱き人形(中国)

た。その頃の人形は、土や石、木や植物の茎などを使った素朴なものであったと思われますが、例えば、紀元前2000年頃の古代エジプトの古墳からは、木彫や土人形が出土しています。死者の伴として、一緒に埋 葬されたものだと考えられています。
 神々の領域にあった人形に対して、愛玩物としての人形が登場するのはギリシャ・ローマ時代。8〜9世紀に入ると、ヨーロッパでは子ども用の抱き人形が作られ始め、中世から近世にかけて、しだいに盛んになっていきます。
 ファッションの先触れとして19世紀のヨーロッパを風靡した観賞用の衣装人形、作者の個性を盛り込み芸術性を追求した創作人形、民族色をふんだんにおり込んだ世界各地の民族人形、あるいは芝居用の操り人形・・・と、ふりかえれば、現在までには様々な役割をもった人形が登場し、私達の暮らしを彩ってきました。


きびがら人形(チェコ・ネパール・メキシコ)

木や布、土などを使ったものから、紙や石灰を混ぜたペーパーマッシュ、陶磁器、さらにコンポジションやセルロイド、合成ゴム、プラスチック、ビニール・・・と、科学技術の発達とともに人形の素材も変化し、歴史を通じて、人形は時代の文化を集約してきたともいえるでしょう。
一方、人形史上の初期に登場する人形と共通する性質をもった素朴な自然素材の人形は、今なお、アフリ
カや中南米、オセアニアなどの各地で伝承人形として生き続け、人形の世界に豊かな奥行を与えています。
また、自然の中で、子どもたちが自ら手づくりする草人形や木の実の人形など、果てしなく古い時代から私達の傍らに存在し続けてきた名もなき人形たちのことも忘れるわけにはいきません。

この夏、日本玩具博物館では2万点を超える「世界の人形コレクション」の中から、100を超える世界の国や地域より1000点の人形資料を選

安産と豊穣をいのる木偶
(西アフリカ各地)

び、二つのゾーンにわけて展示いたします。
 「人形の世界」のゾーンでは、神々の領域にある人形、世界各地の伝承人形、愛玩用の抱き人形、芝居や祭礼のための人形、人形をモチーフにした玩具の五つの項目で、人間にとっての人形の意味や役割について考えます。「人形で綴る世界紀行」のゾーンでは、地域ごとに代表的な人形を集めて展示し、人形を通して世界に生きる人々の暮らしをたどります。
 一堂に会した世界各国の人形たちの表情を慈しみながら、歴史を経て、今日に伝えられた人形文化に対して思いをめぐらせていただければ幸いです。


■展示総数 約100ヶ国1000点
■展示概要
 【人形の世界】

このゾーンでは、「神々と人形」「芝居の人形」「世界の伝承人形」「世界の抱き人形」「人形と玩具」の五つのテーマ にわけて展示し、人形の役割や意味を考えます。

稲の女神(インドネシア)

●神々と人形・・・・・・・・・ここに展示する人形は、安産や子どもの無事な成長を祈るための形代であったり、人間にふりかかる厄災の身代わりとなるお守りであったり、神や精霊の依代、あるいは偶像であったり……と、単純に玩具として作られた人形ではありません。これらを通して、古代の人形の姿を想像することが出来ます。

影絵芝居・ワヤンクリの人形
(インドネシア)

●芝居の人形・・・・・・・・・今では、娯楽演芸として、また舞台芸術として発達したマリオネット、ギニョール、棒操りなどの人形芝居は、もとをたどれば、人形を通して神々の世界を表現し、人間の暮らしの安泰を願う宗教的な芸能として生まれたものといわれています。南アジアの影絵芝居のように、人形には霊魂が宿るとして、演じ方や収蔵の取り扱いに細やかな注意が払われるものも見受けられます。

●世界の伝承人形・・・・・・・・・麦わら、きびがら、ヤシの葉、木の実、土、動物の骨などで手作りされた素朴な人形は、すぐに自然に還ってしまう素材で作られたものが多いだけに、後世への保存が難しい資料です。しかしながら、身近な自然を利用して簡単に手作りされる草の人形などは、世界各地の民族が遠い昔から作り伝えてきたもの、つまり、人形たちの祖先とも考えられます。

抱き人形
(タイのアカ族・ロシアのナナイ族・南アフリカのズール族)

●世界の抱き人形・・・・・・・・・私たちが「人形」と言うとき、一番に思い浮かべるのは、子どもの頃にかわいがっていた抱き人形のことかもしれません。布や張子など、軽く柔らかい素材で作られた抱き人形は、世界中の子どもたちに愛されてきました。遊び手の分身であり友人であり、時に子どもでもある人形を通して、子どもたちは、幼い者を慈しむ心や他者への愛情を育みます。また、そのような人形の存在が、子どもの心に安心と安定をもたらします。 

毛糸編み人形(ドイツ)・
積み木の兵隊人形(チェコ)


●人形と玩具・・・・・・・・・積み木、がらがら、ハンペルマンやジャンピングジャック、棒人形など、人形をモチーフにした玩具の色々を紹介します。これらは、遊びに物語を生み出していくきっかけを与え、子どもの心の世界を広げていきます。

【人形で綴る世界紀行】
人形の顔は、驚くほどに作り手である民族の顔を映し出し、また衣装や姿態は、各地の風俗をわかりやすく表現しています。
このゾーンでは、地域ごとに民族人形の数々を展示し、それぞれの地域の人形文化を紹介しながら、世界の人々の暮らしを綴っていきます。

左から、麒麟を抱く阿福(中国)・
風俗人形(インド)、
カトマンズ風俗人形(ネパール)
水上人形劇の人形(ベトナム)

●アジア・オセアニアの人形・・・・・・・音楽を奏でる人、子守りをする人、働く人。それぞれの人形が民族衣装をまとい、自然に調和して生きる各地の暮らしをうつしとっています。東南アジアの世界では、民族芸能に取材した人形も目立ちます。

風俗人形(モーリタニア)

●中近東・アフリカの人形・・・・・・・・・身近にある自然素材を利用して作られる素朴なアフリカの人形は、古くからの伝承の形が生き続けています。今にも動き出しそうな人形を通して、子育ての様子や祭礼の風景が浮かび上がってきます。中近東は、宗教上の理由からも人形をもたない地域がほとんどですが、近年になって土産物的な人形が登場しています。

●ヨーロッパの人形・・・・・・・・・古い伝統をもつロシアやドイツの木製人形や南欧の土人形、東欧の風俗人形を中心に紹介します。料理をする人、楽器を演奏する人、アヒルを追う人…。人々の暮らしを映す素朴な人形たちには、洗練されたファッションドールとはまた違った魅力があります。

●北米の人形・・・・・・・・・動物の毛皮や魚の皮などを利用して作られたアラスカ地域の人形からは、伝統的な民族衣装をまとい、雪に閉ざされた地域の暮らしがよくうかがえます。一方、アメリカ南部の人形には、先住民の人形文化が生かされており、北米大陸の多彩さを伝えてくれます。

風俗人形
(メキシコ・ペルー・グアテマラ)

●中南米の人形・・・・・・・・・先住民の文化と世界各地から移民が運んだ文化が溶け合ったユニークな社会のあり方は、人形の表情にもよく表れています。各地の先住民が作る土人形や草編みの人形も、近年になって作られ始めた風俗人形も、自然に調和し、子どもを愛して暮らす人々の生活心情を伝えてくれます。

   
木彫ペグ人形(ドイツ)  イヌイットの抱き人形
(アラスカ)